近年の健康志向により「イヌリン」のことを聞いたことや、摂取したことがある方も多いのではないでしょうか。
その一方で、健康に良さそうだけれども、よくわからない方やどのように取り入れればいいのかわからない方もいらっしゃるのではないでしょうか?
いったいその正体はなんなのでしょうか。
今日はそんなイヌリンについてのお話です。
当サイト一押しのイヌリン
金の菊芋
イヌリンとは
イヌリン (inulin) はキクイモやごぼう、にらなどの植物によって作られる多糖類の一種です。
炭水化物の種類で、果糖の重合体(フルクタン)の一種であり、同じ種類の植物による貯蔵栄養素のデンプンとは異なり、人の消化器では分解出来なく大腸の腸内細菌叢(腸内フローラ)ではじめて代謝されるので、栄養成分表示には糖質でなく、食物繊維と位置付けられています。
*腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)
多糖類というのは、糖質の最小単位での単糖がいくつも結合したものの事を示します。
イヌリンは砂糖やでんぷんといった糖類の一種ですが、イヌリンを分解する酵素を人間は持っていないため、イヌリンが入っている食物を食べても全く摂取されずに、体の外へ排出されることになります。
このようなことから、イヌリンは水溶性の食物繊維に分類されていて、腸内で発酵分解されると、フラクトオリゴ糖に変わることで有名です。
イヌリンは腸で水分を吸収するとゲル状になって、同時に摂取した糖質の吸収を抑えてくれます。
また腸内で善玉菌のエサとなるので、腸内環境を改善する効果があり、ダイエット食品などにももちいられています。
また血糖に直接的に作用することはないと考えられていますが、食後の血糖値の上昇を抑制して、腸内細菌による代謝産物が、インスリン感受性を向上させて、糖尿病患者の血糖値を適切にしてくれる効果があります。
インスリン感受性とは、インスリンの働きや分泌量が正常にも関わらず、インスリンが十分な効果を発揮していない状態のことです。
そのため血糖値異常の病気には、効果的な食事だと期待されています。
イヌリンの名称は、キク科オグルマ属の植物 (Inula) から抽出されたことが由来しています。
近年ではイヌリンは栄養上の性質が大変優れることで、食物製品に使用されることが多くなっています。
味は甘めのものから薄味の物まで多種多様で、砂糖や脂肪、小麦粉などの代わりにつかわれることもあります。
イヌリン構造
イヌリンは砂糖に果糖がいくつもつながった構造をしています。植物は砂糖やでん粉と同じように貯蔵するエネルギー源として、光合成により得られた糖をつなげることでイヌリンをその体内に作り出しています。
フジ日本精糖株式会社から引用
イヌリンの歴史
イヌリンは約5000年ほど前から食べられている、チコリに由来する水溶性食物繊維です。
水溶性食物繊維のイヌリンは、多くの食品に含まれていて、かねてから世界中で食べられてきました。
ごぼう、タマネギ、にんにくというような日本人にとって馴染みがある野菜などにも、イヌリンがふくまれていますが、なかでも含有量が多いのはチコリや菊芋です。
チコリと人間の係わりは深く、およそ5000年ほど前に生存した古代エジプト人、古代ローマ人がもうすでにチコリの根を食べていたと、考えられています。
また、フランスやヨーロッパなどでは、18世紀頃から現在に至るまで、チコリの根からつくられた、ノンカフェインコーヒーが愛されています。
近年日本では、水耕栽培のチコリの葉をサラダで食べるようになってきましたが、古来から食べられていたのは畑で栽培されたチコリの根で、大根のような、白くて大きな根の部分には、イヌリンが豊富に含まれております。
チコリのイヌリンは、食として長い歴史があり、海外では乳幼児用のミルクにも使用されていて安全性も認められている食品です。
イヌリンはどんな食品に含まれているのか
イヌリンはチコリや菊芋などの塊茎に含まれていることが有名です。
塊茎(がんけい)とは根の一部が肥大化して塊になったもので代表的な植物ではジャガイモがあります。
菊芋の原産国はアメリカで、江戸時代ごろから戦時中までは日常的に食べられていました。
しかし食が豊かになるにつれて食べる機会が減ってきました。
近年の健康ブームで、菊芋の効果がテレビや雑誌で紹介されるようになり注目され始めたのよ!
食材100g当たりのイヌリン含有量
上記のような野菜に含まており、普段私たちが食べている食品に含まれていることがわかります。
食品加工産業における代替え
イヌリンは食物繊維として摂取されるばかりか、保湿性や増粘性といった特長をいかして、生クリームや蒸しパンといったお菓子の品質改良にも使われています。
また近頃では、脂肪のかわりとして使われることもあり、イヌリンから作れた低カロリーのバターが販売されています[1]。
イヌリンの生理作用
イヌリンに期待できる効果
整腸作用
イヌリンは腸内のビフィズス菌を増加させることで、胃腸を整えてくれます。
その結果毎日のお通じの習慣が良くなったということをよく耳にします。
それらの働きはイヌリンがビフィズス菌などを含んだ腸内の善玉菌のエサとなり、腸内細菌がつくった短鎖脂肪酸と呼ばれる物質が腸の運動を促すことや、増加したビフィズス菌などの善玉菌が便の量を増やしてくれたことなどが影響していると考えられています。
血糖値
イヌリンは食後の血糖値の上昇を抑えてくれる効果があります。
この効果はイヌリンが小腸での糖の吸収を抑えてくれることや、イヌリンがビフィズス菌をはじめとする腸内細菌のエサとなり、その腸内細菌により作り出された短鎖脂肪酸という物質が腸内にあるホルモンを出す細胞を活発化させインスリンが生産され、血糖値の上昇をおさえてくれると考えられています。
水溶性食物繊維の働き
水溶性食物繊維は、腸内でゲル化することで、糖質の吸収が穏やかになる効果があることが色々な研究で分かっています。
2型糖尿病患者の研究では、イヌリンを摂取した群とプラセボ※で比較した結果、イヌリン群でエネルギーの摂取量が減り、体重減少や空腹時血糖値、HbA1c※2の改善を認められたということが報告がされています。
この研究ではさらに、抗酸化物質であるSOD(スーパー・オキサイド・ディスムターゼ)※3が上昇していました[3]。
これらの研究については症例数がまだまだ少ないという問題点はありますが、いつくかの研究で抗酸化物質との関連が報告されているため、今後の研究に期待がかかります。
※1のプラセボとは本物そっくりの偽物の薬のことで
Aのチームには本物の薬を摂取
Bのチームには本物そっくりの偽物の薬を摂取
その結果がどのように変化するか検証する時などに使われます。
人には思い込みというものがあって、薬以外で自然に治ることなどがあるから、この様な実験がされるのよ!
詳しいことはこちらから
※2の HbA1cとは赤血球にブドウ糖が結合したものです。
約2か月間の平均血糖値を推定する指標となります。
※3 SODとは、体内に発生した活性酸素を分解する働きがある酵素のことです。
酸化を抑制する働きがあることから、ヒトの寿命にも大きく影響ているといわれています。
中性脂肪
イヌリンは血中の中性脂肪を低下させる効果があります。
イヌリンが食物の胃の滞留時間を伸ばすことや、イヌリンがビフィズス菌などの腸内細菌のエサとなり、腸内細菌によって作り出された短鎖脂肪酸という物質が、食欲中枢に作用しその結果食欲を抑えてくれます。
また短鎖脂肪酸が腸内ホルモンを分泌する細胞に刺激をあたえ、食欲抑制ホルモンの分泌を促進する効果があると、考えられているため、血中の中性脂肪の低下効果があると言われています。
ダイエット効果
イヌリンは満腹感を得られやすい食物繊維です。
保水性にも優れていることで体内の水分を吸収して拡張します。
その結果満腹感が得られ、余分なカロリー摂取を抑えることができます。
またイヌリンをエサにする腸内細菌が、食欲抑制に効果がある言われる短鎖脂肪酸をつくることもわかっています。
余分な糖の吸収・体脂肪の合成を抑制してくれる水溶性食物繊維のイヌリンは、トロトロとした形状や水を含むと膨らむ性質により、他の食物の消化を遅らせる働きがあります。
また体脂肪を合成するホルモンは、食後の血糖値上昇によって増加するため、糖の吸収スピードを遅らせることで、余分な体脂肪の抑制に効果があります。
イヌリンで糖の吸収を遅くすることは、余分な糖の吸収を抑制することと、体脂肪合成抑制の2つのメリットがあります。
腸内環境改善で痩せやすい体づくり
イヌリンの成分の一種であるオリゴフルクトースを摂取した群(イヌリン群)とプラセボ群を比較した結果、体重減少、とくに体脂肪の減少を認めた報告があります。
また食欲に関与するホルモンであるグレリンの減少とPYYの上昇をイヌリン群で認めました。
これらは一般的に、食欲抑制に作用するホルモンといわれており、イヌリン群でのエネルギー摂取量の低下も、ホルモンの影響があるのではないかと考えられています。
痩せやすい体をつくるには、腸内細菌のバランスが重要です。
腸内細菌は大きく3に分けられます。
善玉菌と悪玉菌、どちらにも属さない日和見菌でこの日和見菌は善玉菌と悪玉菌のどちらか多い方に味方します。
そしてこの腸内フローラのバランスは
「善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7」
が理想とされていて、不規則な食生活をすることはこのバランスが壊れ、日和見菌が悪玉菌の味方をして、肌荒れや便秘につながります。
この様な状態になると、痩せやすい体にはなりにくくなります。
ここでイヌリンの出番です。
イヌリンは難消化性デキストリンやポリデキストロースといった、他の水溶性食物繊維と比べ、特に善玉菌のエサとして活用されやすく、善玉菌を増やす手助けをしてくれます。
その結果痩せやすい体になります。
ミネラル(カルシウム)の吸収促進
動物実験の結果では、イヌリンを摂取したマウスと
プラセボ群(偽のイヌリンを与えたマウス)をくらべた時、カルシウムとマグネシウムの吸収イヌリン群の方が増加したという報告あります。
これは腸管における腸鎖脂肪酸の発酵に関連している可能性があると考えられています。
また思春期の男女を対象にした研究では、8週間イヌリンを摂取した群とプラセボ群(偽のイヌリンを与えたグループ)を比較した結果、イヌリン群でカルシム吸収と骨の活性化が促進されました。
イヌリンは食品に含まれている成分であり、安全性は高いといわています。
健康作用があってダイエットにまで効果的なイヌリンですが、副作用などの心配はないのでしょうか?
摂取量などの目安はどのくらいなのか気になりますね!
それでは副作用や摂取量について説明しますね!
イヌリンの副作用
食物繊維なので安全。
しかし過剰摂取には注意しましょう。
イヌリンは食物繊維の一種のため、健康を害することは考えにくいのですが、何事も行き過ぎはNGです。
また極めて稀ですが、イヌリンの食物アレルギーが数例報告されています。
卵や柑橘類など他の食品と同様に、アレルギー反応をおこす人もいるようです。
またサプリなどを必要以上に飲みすぎると、腹痛や下痢、下痢によるミネラル欠乏症を引き起こすことがあるので注意してください。
サプリなどを必要以上に飲みすぎると、腹痛や下痢、下痢によるミネラル欠乏症を引き起こすことがあるので注意してください。
沢山飲んだからと言って健康になる効果が大きくなるわけではないので、適度な量を使用してください。
イヌリンを効果的に摂取する方法
イヌリンを摂取する一番いい時間帯や方法はいつなのでしょう?
この様な実験結果が報告されています
「30名の成人男女を対象に、『イヌリン』を用いた実験を実施したところ、面白い結果が得られました。実験の内容は、30名のうち15名には朝食時に菊芋パウダーを、残りの15名には夕食時に菊芋パウダーを摂取してもらうというものです。1週間、菊芋パウダーの摂取を続けてもらった結果、朝食時に菊芋パウダーを摂取したグループにおいては、便秘の改善が見受けられました。また、朝食後の血糖値の上昇が抑えられたうえ、昼食後、夕食後の血糖値の上昇も緩やかになっていたことが分かりました」と、柴田先生。
ちなみに、朝食の内容が昼食や夕食後の血糖値上昇に影響する現象は、「セカンドミール効果」と呼ばれているそうです。「つまり、朝食時に『イヌリン』のような水溶性植物繊維を摂取すると、昼食後、夕食後も血糖値の上昇を抑えられるでしょう。また、玄米など、植物繊維を多分に含む食材を朝食として摂ると、似たような効果が得られると考えられます」
早稲田大学まなびのコンパスhttps://www.wasecom.jp/article/1700
この様にイヌリンの作用を効果的にうけるには朝食の時に摂取することで昼食や夕食後の血糖値の上昇も抑えることができます。
イヌリンの摂取目安量
イヌリンは、菊芋やごぼうなどの普段から私たちが食べている物に含まれている成分です。
そのため安全な成分だと考えられています。
しかしイヌリンの摂取目安量などは、はっきりとした定義が有りません。
色々な研究で使用されている摂取量は、5~15gの範囲で効果を検証しています。
またイヌリンは、摂取することで、身体にいい効果が報告されているのも事実です。
その反面、副作用についての報告もあります。
イヌリンを摂取することで胃腸に苦痛を引き起こしたり、下痢になったりする可能性もあるので、10g/日が許容であると考えられます。
最初から多量に摂取するのではなく、1日2〜3gを1〜2週間摂取して体を慣らしながら、徐々に量を増やしてみてはいかがでしょうか。
正しく使用すれば体にとっていい事が沢山あるので、あなたも是非積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか!
まとめ
イヌリンの効果的な摂取方法は、朝食の時に一緒にとる事で、昼食や夕食後の血糖値の上昇を抑える効果があります。
摂取目安量は1日2~3gを1~2週間続けて身体をならし、その後1日10g位が適量だと思います。
食物繊維なので取りすぎたから体に悪い事はないと思いますが、腹痛や下痢などが起きることがあるのも事実です。
たくさん摂取したから健康になるものではないので、くれぐれも取りすぎには注意しましょう。
当サイト一押しのイヌリン
金の菊芋